この記事はAlmama編集部平山久仁子が執筆しました。
水ぼうそうの原因ウイルスは、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)です。この水ぼうそうは治った後も体内に静かに潜み続け、数十年後に「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」として再活性化することがよくあります。
この身近なウイルスが、将来の認知症リスクと深く関わっているかもしれない可能性を示唆する大規模な研究結果が、医学誌Nature Medicine誌に発表されました。
この研究では、アメリカの1億人以上の医療記録を分析した結果、帯状疱疹の発症やその予防ワクチンが、認知症リスクにどう影響するのか報告しています。
高齢者の帯状疱疹接種
水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)は、ほとんどの成人が体内に持っている一般的なウイルスです。初めての感染は「水ぼうそう」として子供の頃に発症することが多い疾患です。ただ、症状が治まってもウイルスは神経節(神経細胞が集まる場所)に潜伏しまま、生涯人体の内で生き続けます。
そのため加齢やストレス、免疫力の低下などをきっかけに、再び活性化します。神経を好むウイルスのため、体の片側に痛みを伴う水ぶくれがと長期的な痛みを引き起こします。
研究によると水痘・帯状疱疹ウイルスが脳内で炎症を引き起こしたり、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβのような異常タンパク質の蓄積を促したりする可能性が指摘されています。
アメリカで、1億人以上の匿名化された個人の医療記録を最新の機械学習技術を駆使し、認知症リスクに影響しうる約400の因子との関連性を厳密に調査した結果、その関連性が明判明したと報告されています。
帯状疱疹を経験した人は、そうでない人と比べ将来的に認知症と診断されるリスクが高く、帯状疱疹を1回経験した人に比べ2回以上繰り返し発症した人の認知症リスクは7〜9%も高くなったことが示されています。これは、ウイルスの再活性化による体への「負担」が大きいほど、認知症リスクも高まる可能性を意味しています。
国内の帯状疱疹の傾向
帯状疱疹は、支配神経領域に疼痛を伴う水疱が出現する疾患で、合併症として発症後3ヵ月以上にわたり痛みが持続するのが帯状疱疹後神経痛(PHN)です。さらに髄膜炎、脳炎、ラムゼイ・ハント症候群といった生命の危険や神経学的後遺症もたらす疾患との関連も知られています。
1997~2020年間で、高齢者の帯状疱疹は年々増加傾向を見せ、罹患率は50代から上昇し、70代でピークを達しています。
帯状疱疹予防ワクチン効果
帯状疱疹の予防ワクチンを接種した人は、接種していない人と比べ、認知症リスクの軽減が確認されています。とくに、より効果の高い不活化ワクチン(商品名:シングリックス)を2回接種した場合では、認知症リスクが27%低減しました。
今回の研究結果は、帯状疱疹ワクチンが認知症を「直接」予防できないとしても、帯状疱疹の発症を効果的に抑え、結果的に認知症リスクを低減する可能性が強いことを示しています。とくに、現在主流となっている不活化ワクチン(シングリックス)は、高い予防効果が長期間持続します。
また、過去に帯状疱疹を経験した方は、他の認知症リスク因子(高血圧、糖尿病、喫煙、運動不足など)の管理に積極的に取り組むことが推奨されます。
高齢者以外の接種推奨者
• 免疫不全疾患のある方。
•特に 妊婦は、水痘に罹患すると流産や先天性水痘症候群になるリスクがあります。
•低年齢期に水痘に罹患しなかった方。
2021年9月の国立健康危機管理研究機構(旧国立感染症研究所)の報告では、入院した水痘患者は成人割合が71.2%と高率だったことがわかっています。