TOP
事業概要記事・監修当事者研究ライブラリーお問合せ

トップインタビュー

【食と健康長寿】
「健康を守る食だけど…
   食だけでは語れない認知症」
       食の達人 程一彦氏

食・健康長寿の秘訣

ー いつもお元気な程さんの健康の秘訣を教えてください。

程 健康には、腸をきれいにしておくことが大切です。腸の善玉菌を増やし、便秘をしない。
便秘解消には、朝起きたらまずコップ一杯の水を飲む。そして朝食は必ず食べて体を温めてから、毎日のスタートを切ることが大切です。
食事は腹八分目。そのためには食事に15分以上かけてください。脳が満腹を感じるまでに必要な時間です。僕は「日本一口32回噛む会」会長です。(笑)よく噛むと唾液がたくさん出て、病気の予防にもなります。15分楽しく噛んで、いい習慣をつけましょう。

ーなるほど。食事のバランスで注意することは?

程 野菜や果物、穀物は、お肉の3〜4倍食べましょう。種類も1日38種類以上食べましょう。

ー 38種類以上、難しいですね。

程 調味料や香辛料を加えると、意外と寒天に種類を増やせますよ。そして「お台所に鏡1枚運動」です。いつも笑顔で料理をつくります。笑顔は免疫細胞を活性化させ、免疫力のアップにも役立ちます。

ー 笑顔がおいしくなる秘訣(笑)ですね。梅田のお店はいつ頃閉店されましたか?

程 もう6年になります。妻がしんどいというので締めました。実はその半年くらい前から認知症の兆候がありましてね。閉店してから、妻の認知症はあっという間に進みました。

突然の認知症に、思いははてず

ー 自宅で介護しておられたのですか?

程 初めはそうでした。在宅介護を利用して、一緒に暮らしていました。
認知症が進み、僕も仕事でずっとはついていられない中で、一人の時間があると、徘徊するようになりました。
体は元気ですからね。家から宝塚まで10kmも歩いて行って、阪急百貨店の方が家まで送ってくれたこともありました。
それで危険だと思い、ケアマネージャーに相談して3年前に施設に入所させました。

ー 奥様は施設ではどの湯尾にお過ごしですか?

程 元気にしています。認知症者同士では、話はかみ合いませんが、友達もでき、楽しそうに話しています。(笑)
月に1度は、会いに行きます。でも、病気の進行を見るのは、つらい…。

ー お話し相手がおられるのは、いいですね。

程 そうです。楽しそうにしいるのを見るのは嬉しいです。しかし、介護は大変な仕事だと思います。妻が認知症になり、4年くらいは家で暮らしていました。
当初は妻の認知症を僕は受け入れることができず、健康な時と同じように会話しては「何度言ったらわかるのか」と腹が立つこともありました。健康な時の暮らしが、頭にありますからね。

ー 私も、母も認知症、同時に父も認知症で徘徊するという状況で、仕事もあり逃げ出したいと思うことがありました。

程 それはねぇ、誰でもそう思う時があるでしょう。その思いは、経験しないとわかりませんね。
結局、心の中でどう受け止まるか、気持ちがどんどん老い詰まられてくるから、大変ですよね。

ー 認知症の人は、結構器用ですよね。

程 話も上手くつくりますね。
キレイなガラス食器をコレクションして、自分の部屋に集める。それらが病気のせいだと納得できるまで、ずいぶん時間がかかりました。
妻の関心が僕に集中して、猫と一緒に僕についてまわる。猫と一緒に僕をじっとみている。こんなことが続いたりしました。

ー 姿が見えないと不安だから、探しますよね。

程 そう! だから一人で探し出かけて徘徊になる。でも優しい感情は失くしていません。僕が料理をして、綺麗にお皿に並べると「うわぁ、きれい」「豪華やね、ありがとう」と言ってました。家ではずっと一緒に食事をしていました。   

待たれる早期解明と治療法の開発

ー 認知症発症への食の影響は、どのようにお考えですか。

程 ずっと同じ食事をしてきました。それなのに、妻だけが認知症になった。食の影響はあるのかもしれませんが、食だけが問題ではないのでしょう。
夫として、妻の認知症を認めるには時間が必要でした。できれば、共に暮らしたい。施設か家かの選択は、簡単には行きません。お医者様は、まず認知症が病気だと認めなさいと言いますが、難しいですね。

ー 家族としての感情が、拒むものを感じますね。

程 施設に入所させるのは、心苦しい。しかし、お医者様は「施設で専門の介護を受けるのが、本人のためにも一番いい。それをあなたが異界しないといけない」と言いますが…。
でも、どうも心もとないですね。

ー 私も施設を訪れると、両親を家に連れて帰りたくなるときもあります。

程 しかし、家では施設のような介護はできないでしょう?

ー できません。また、そんな介護の負担を子供が引き受け、 一時的に両親が喜んでも、時が経つと子供の負担を感じ、きっと幸せとは感じないでしょう。難しいですね。

程 感情面、物理的な安全、いろいろ難しい。妻を訪ねた時は、手を握ってスキンシップします。気持ちが落ち着くみたいです。
ただ、帰りは切なくて、断ちがたい想いにとらわれます。
早く認知症のメカニズムがわかって、治るようになればと祈るばかりです。

ー 本日はありがとうございました。

2007年1月20日 

程 一彦氏(てい かずひこ)
昭和12年生まれ。中華料理人・研究家(薬膳・台湾料理・香港料理系)。「台湾料理・龍潭(リュータン)」オーナーシェフ。「薬膳」料理の第一人者。2010年9月高齢を理由に「台湾料理・龍潭」を閉店。2017年にフランスの専門書ル・シェフにて世界のトップシェフ100人に選ばれる(中華料理の分野では唯一)。講演や著書でいち早く「食育」の重要性を主張し、様々な活動を行っていた。台湾訪問中の2019年6月23日、台北市内のホテルで死去。81歳没。